【琳派から近代日本画家まで】椿絵名品展「つばき咲く」酔いしれレポート

日本の代表的な花といえば、桜、梅、菊。
そして、これから冬にかけて咲きはじめるツバキも、昔から日本人に愛されてきた花です。

江戸時代の琳派の画家や文人画家をはじめ現代にいたるまで多くの画家により、主要なモチーフとされてきたツバキ。
高岡市美術館で開催されていたこの名品展を、会期終了の一日前にあわてて鑑賞してきたのですが、思っていた以上に素晴らしい展示に心動かされてしまいました。

ツバキは、ただ古くから愛されてきた常緑樹というだけでなく、日本人にとって重要な存在でもあったようで、「日本書紀」には古代天皇にかかわる「呪木」とされていたことがわかっています。さらに、さかのぼること縄文時代には、櫛にツバキの木が使われていたことからも、私たち日本人の生活に寄り添うように存在していた樹であるんですね。

今回の「つばき咲く」の展示では、ツバキがモチーフとなっている日本画、洋画、工芸の名品82点を、7つの章にわけて展示。ツバキの持つ多面性をさまざまな芸術家が発見し、それぞれの表現に見事に生かされていました。

一章、近世に咲く

「日本書紀」「万葉集」「源氏物語」にもその名が登場しますが、ツバキが日本人に愛でられるようになったのは、室町時代。豊臣秀吉などの将軍が茶の湯をたしなむと、茶花として重要な存在になります。江戸時代になると本格的な「つばきブーム」が到来し、元禄文化に活躍した尾形光琳ら「琳派」も、ツバキをモチーフとした作品を発表し、近世の日本画や工芸の爛熟期を象徴するモチーフになっていきます。

伝 狩野山楽「椿梅図」 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社蔵(茅ヶ崎市美術館より引用)

二章、春を告げる

ツバキはきびしい冬に咲く数少ない花であり、最盛期が2月下旬から3月上旬となるため、冬から春の季節の変わり目を告げる花としての顔をもちます。

 

この章では、同じく春を告げる象徴であるメジロ、スズメなどの鳥が花とともに描かれた構図になっています。作者によって余白のとり方であったり、わざと絵の具をにじませる「たらし込み」技法の違いであったり、また葉脈まで描くのか、輪郭だけ描くのかという表現の違いが見られ、椿絵をとおして日本画を見比べられる贅沢な展示となっていました。

三章、雪に咲く

7つの章のなかでは一番数が少なく、雪とともに描かれた椿絵、6点が展示されていた章。

会期中に行われた、80点以上の展示品のなかからの人気投票では、この章にある横山大観の「雪旦」が堂々の一位に選ばれたとのことです。

ギャラリートークをされていた学芸員によると、雪旦の「旦」は「朝」を意味し、まさに雪が降った朝の様子を描いた軸なのですが、他の「雪に咲く」作品との違いは、白い絵の具を使わずに雪を表現していること。墨の濃淡で表現された静かな雪の朝は、ミニマリズムでありながらも豊かな表現力が感じられ、「やっぱり私もこれが一番かな~」と思いながら進むと、ある一つの絵が目に留まりました。

残念ながら写真はありませんが、牧進の「雪色」です。
竹囲いからのぞく一輪の紅椿、その手前にはエサを探すスズメ、奥に葦が浮かぶ、冬の庭を切り取った日本画。(記憶をもとに書いているので多少の違いはご容赦ください…)

ツバキの枝に積もった雪からのぞく、あざやかな葉の緑と大輪の紅い花。
雪とともに描かれた椿絵の特徴として、雪のもつ寒さ、冷たさ、厳しさをやわらげる効果がみられるといいます。
雪の予報がでていた前日に観たせいか、きびしい冬の到来のなかに咲く赤と緑の生命の躍動感、エサを探すスズメとともに、明日への希望を表現しているように映ったこの絵。

ツバキの色が雪に映えるこの絵のように、自分のカラーというのは、もしかすると冬の雪があらわす逆境でこそ生かされるのではないか。そんな勇気と希望が描かれているようでもあり、何度もこの絵の前で立ち止まってしまいました。

ツバキが愛される理由のひとつに、冬の厳しさが終わり、春を告げる象徴の花であることが大きいといいます。可憐な桜や梅とは違い、花びらも大きく、葉も分厚い、雪降る冬もなんのそのという顔で色づき、咲く花。
そのたくましい、凛とした美しさが心を打つのかもしれません。

四章の「常緑を生きる」では、そのツバキの葉が決して脇役ではなく、むしろ花を生かしていること、また葉だからこそ見せる個性豊かな表現が印象的でした。

五章は「一輪で立つ」。
ツバキそのものは葉が生い茂る常緑樹ですが、一輪で生けることも多く、また一輪でもサマになる花です。
群れても美しく、一人になるとさらに際立つ品格。
また、器によってもその表情が変わる、その多面的で奥の深い魅力が日本画だけでなく、洋画でも表現されていました。

六章、吉祥を慶ぶ

おめでたい花木といえば、「松・竹・梅」の三種ですが、じつは江戸時代ごろまでは「椿(チン)・竹(チク)・梅(バイ)」の三種が歳寒三友として描かれ、紅白の花と常緑が「吉祥」の意味を持ちました。

赤・白・緑といえば、クリスマス!
江戸時代にはクリスマスを祝う習慣はなかったにせよ、自然が成したこの三色に、昔の日本人がハレを感じとっていたのは間違いないようです。

七章、幽玄に誘う

古代から薬草として、種からは油が、また枝は神事にも使われてきた歴史があるツバキですが、花びらが一枚、一枚散っていく桜とは違い、花ごと首からボトリと落ちることから、戦国時代の武士の間では不吉な意味を持つ花でもありました。

その生命力、そして散りぎわの潔さに、どこか不思議で神秘的な幽玄さを芸術家たちは感じ取っていたようです。

極寒の地で一輪で咲く白いツバキの絵。また文豪・川端康成の小説「眠れる美女」にちなんだ同名の作品など、人生に訪れる明暗、時の移ろいといったものを、ツバキの色づかいや構図で表現することで、はかなく美しい時間を生きていることを教えてくれるようです。

番外編 かわいいツバキのモチーフ

高岡市美術館の一階では、今回の展示にちなんだ小物が販売されており、その奥のティーラウンジでは、和トーストやツバキの和菓子のセットも販売していました。

 

 

で、私がオーダーしたのは、まったく関係ないアップルパイ(笑)

よく見ると、伝票をはさんでいるクリップにまでツバキが描かれてあり、展示品だけでなく、カフェでもテンション上がるというしくみ!


それだけでなく、店員さんが胸につけているツバキのブローチ、そしてエプロンがまたかわいい!
現代では、こうした和のかわいいモチーフとしても愛されるようになったんですね。

 

高岡市美術館で今回展示されたこれらの名品は、椿絵コレクションで知られるあいおいニッセイ同和損害保険の所蔵品だということです。

ここ北陸では、椿山のツバキの枝を折ると「暴風雨が来る」という言い伝えがあったとか。椿絵を所蔵していたのが損害保険会社の母体の一つである大東京火災海上保険の越後出身の創業者ということからも、ツバキに安寧と繁栄を祈るといった日本人の心が映し出されているのかもしれません。

今回の椿絵の鑑賞を機に、この花木のように凛とした強さを持ち、逆境でも光り輝く、一輪の女になり、長く愛される存在になりたいと願うのでした。

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