こちらのお墓をご建立くださった施主様がご来店され、実家の古いお墓を墓じまいしてほしいとのご依頼がありました。
奥様の実家のお墓を継ぐ方がおらず、将来的に墓じまいしないといけなくなるため、嫁いだ家の新しいお墓とご実家のお墓の「両家墓」になるよう、このお墓をご建立されました。
まだご両親はご健在なので、実家のお墓の解体は新しいお墓を建立してすぐでなく、将来的になさるおつもりでした。
花が咲きそろったお墓を見て。お父さまの心変わりとは?
お施主はこの墓地をお花が咲き誇るガーデニングのような墓地をイメージしてご建立されたのですが、私どもも近くを通るたびに墓地によって、お墓のその後の様子を見守っていました。
どんどん明るくなっていく墓所に、こちらもしあわせな気分になっていたのですが、ある日お施主のお父さまがこう言われたそうです。
「こんなに明るいお墓なら、ここに早く入れてやりたい」
お父さまはもともと両家墓を建てること、そしていずれそこに自分たちが入っていくことには抵抗がありました。
それもあり、新しいお墓が建っても、古いお墓を壊して中に入っているお骨を改葬(移動)することはまだまだ先のこととお考えだったのです。
でもどんどん墓地に花が咲き乱れる様子に心が動かされたようで、ここに家族のお骨を入れてあげたいと思われるようになったそうです。
花があるだけで、そこに気配を感じる不思議
またお施主が墓地で花壇を触っていると、近くの墓地にお参りにきた人から必ず声をかけられるとのこと。
実際に私たちも近くに建っているお墓のクリーニングをしたお客様に、こんな感じの両家墓に建て直したいと言われたことがありますが、そのときに「うちで建立したんですよ!」と言えることが誇らしいです。
お花がこうして植えてあるだけで、そこに誰かが立っているような人気(ひとけ)を感じさせる花の力をあらためて考えてみると、約7万年前にネアンデルタール人が死者に花を手向けたことがお墓づくりの原点になっているというのは、なるほどと納得させられます。
社会も人間も時の流れのなかで大きく変わってきたはずなのに、花に心が動き、安心する「こころ」は、もしかしたら人類の本能的なものなのでしょうか。
私たちは7万年も前から同じ想いをつないできているようです。