お彼岸やお盆のお墓参りが終わったころ、例年お客さまからこんな電話をいただくことが多くなります。
「こないだのお盆のお墓参りに気づいたんですが……」
「彼岸の墓参りで気づいたんです!」
お盆やお彼岸は、一年のなかでお墓の異変にもっとも気がつく時期でして、 お盆やお彼岸後の私たちは、何とかしてその異変を取り除き、不安に感じているお客さまを安心させてあげたい!と思うのでございます。
今回、お盆のお墓参りの際に異変に気づいたのは、 以前に香炉を新しくしていただいたお客さま。
墓にシミのようなものが点在していたのでタワシでこすってみようか悩んでいたところ、 ご主人の「こういうときはスナダ石材さんに相談してみればいい」という一言で、 ご連絡いただいたしだいです。
向かった先は、高岡市にあるお寺の境内墓地。
これは墓石の一番上、棹石の横にあるシミですが、反対側にも一ヶ所。棹石の下の上台にも一ヶ所、このような大きなシミがあります。
アザのようにも見えますが、外側から触ってみると、その箇所だけザラザラしています。どうも上から汚れが付着しているようです。そこで、まずはスポンジで汚れが落ちるかどうか試してみました。
こすったスポンジには緑色の汚れが付着してはいるものの、アザのようなシミは残ったままで、黄色っぽい色をしているものもあります。
名探偵スナダマンが着目したのは?
お墓の名探偵スナダマンは、シミが出ていない他の石をよ~く観察します。そして、下台や納骨堂などが全体的に黄味がかっていることに着目しました。
墓石に使われている石の鉄分量との関係
石の変色が見られたことから経験上考えられるのは、もともとその墓石に使われている石の中に錆(サビ)となる鉄分が多く含まれている可能性です。その鉄分が時間の経過とともに酸化し、表面に出てきている状態がまず考えられます。
墓碑や上台は部分的な錆で、他の台石には全体的に錆が出ていることから、墓碑や上台の石は、なるべく錆が出ていない石を選んで使っており、他の台石は錆が出ている部分を研磨して使っている可能性が考えられます。石そのものの鉄分量は多いので、このように時間の経過により、変色してくるのでしょう。
石と人間の肌の類似性
もうひとつの可能性として、そのシミ部分の石肌の弱さです。シミになって見えた部分は、その石のなかでも弱い箇所のため、磨きがうまくのらずに結果的に弱い磨きになってしまったのでしょう。そのため、外からの汚れ(鳥の糞や黄砂など)や雨雪による影響がどうしてもその箇所に集中し、汚れが付着しやすかったり、水を吸いやすくなってしまうのです。
普通は石の面が磨かれていると、ある程度の汚れは自然に雨で流されていくものですが、磨きが弱いところに汚れが蓄積し、シミになりやすい状態になっていたのかもしれません。
人間の肌にたとえると
人間の肌にたとえると、分かりやすいかもしれません。
アザやシミが出ている部分の表面はカサカサしているものです。そこの部分はファンデーションがのりにくく、肌の中でも弱い部分です。
スポンジでこすったときに付着した緑色の汚れは、もしかしたら鳥の糞がついたまま雨で流れ落ちず、そのままカビになってしまったせいとも考えられます。
ただし、その汚れは表面だけのものなので、汚れが落ちてもアザのようなシミは残ったままになっているということです。
お墓のシミの要因まとめ
①もともと鉄の含有率が高い石であること
②その鉄が酸化し表面に浮き上がってきている
③部分的に磨きが弱い(磨きがのりにくい)ところに外部の汚れが付着し蓄積しやすい
④その汚れが雨などの水分により苔のような色合いになり、目立つ
これらの要因が、時間が経過してから出てきた墓石のシミアザで、その表面の汚れを落としてもシミが消えない理由だと考えました。
墓石シミのリペア後
スクレイパーでシミ部分を取り除き、見た目にはシミがほとんど分からない状態になりました。
お客さまには、シミアザができた要因と、今後も出てくる可能性があることをお伝えいたしました。
中から出てくるシミアザを消すのは、このようにスクレイパーでこするなどの方法を取ることになりますが、表面に汚れを付きにくくするために撥水剤を塗布し、外部からの汚れが蓄積しないようにすることはできるとお伝えし、今後墓石クリーニングとともに検討いただくことになりました。
長年、お墓を守っていくなかで、このような自分では解決できない難問が出てくるかと思います。
そうした問題を解決するときは、持っている知識と経験をフル活動させて、 昔ひそかに憧れていた探偵になったかのようで、気分は名探偵ポワロ!
言い過ぎました。わたしは、ポワロ(真ん中)の秘書、ミス・レモン (画像右側)ですね。でも、ときどきはポワロの助手のヘイスティングス(画像左側)のように、暗躍することもあります。
小さなことでもお困りのことがあれば、お墓の名探偵スナダマンとミセス・スナダにぜひご相談ください!!