なぜ、お墓には「石」がいいのか?2018年の今、気づいたこと

墓石はどうして「石」でつくられるようになったのでしょうか。
そこには、人類と石との関わりという長い歴史が横たわっています。

人間は石を道具として使うようになり、ここまで発展してきました。
硬い石には硬い石を用い、鋭利状にして活用することで木を切ることもできるし、火を起こすこともでき、肉を剥いで食べることができるようになる。
さらには石に文字を刻み「伝える」ことで、大きく発展してきました。

また、地球は岩石の星でもあり、石は人間にとってもっとも身近な存在だったこともあるでしょう。
人類がどれだけ発展しようと、必ずそこに「死」が横たわります。その脳の発達にともない、死から「祈り」が生まれ、石に祈りの物語をのせてきました。

とここまでが、つい最近までの「墓が石であるのはなぜか?」の問いの答えだと思っていました。

石はほんとに確固な存在なのか?

石はその性質上、石(岩石)として出来上がるまでには長い時間を要します。
長いと一言でいっても、数百万年から数千万年以上、その発生場所によっては数億年かかることもあり、果てしない時間です。

墓石に使用される御影石は、火成岩とも言われ、火山活動で発生するマグマが冷えて固まって作られる岩石なのですが、マグマの性質やどれだけの期間で冷え固まったかで、その石の組成が違います。

つまり、石は地表に出てきたときには堅固で揺るぎないものではあるけれど、自然の営みが違えば、まったく同じ石は生まれなかったと言えます。

石は性質的には確固としたものですが、その発生的には、実は脆く、儚いものでもあるのです。

なんかこれって、人間そのものを象徴しているようにみえませんか?

遺伝子が変われば姿カタチも変わり、また育った環境が変われば性格も変わるのが、私たちです。

また、その人間がつくる家族も同様です。

家族は固い絆で結ばれている、切っても切れない縁でつながっている一方で、その制度という後ろ盾がなくなると、つながりは脆く、儚いものでもあります。

カンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞した是枝監督の映画「万引き家族」のキャッチコピーは、「盗んだのは、絆でした」となっています。

この映画のストーリーは疑似家族が主人公ですが、ほんとうの家族以上にお互いを必要とし、必要とされる姿が描かれ、たしかにほんとうの家族から「絆」を盗んだように見えます。
それくらいに「家族」とは脆く、儚く、だからこそ大切にしないといけないことを、この映画は教えてくれています。

石は「私たち」を表している

堅固で揺るぎないものである石。
私たちは仕事柄、そこを強調しますが、視点を変えるとそれは自然という大きな枠組みの変化により、その性質が変わっていたという脆く、儚い存在でもあります。

石も人間も、そして家族も、じつは絶対的存在ではなくて、だけど厳しい環境にも適応できる、したたかでしなやかな存在といえるでしょうか。

そんな人間と石の、はるか昔から続いてきた物語が、お墓というカタチになって、また家族の物語を紡いでいく。いつか終わってしまう物語を。

私たちの世は無常ですが、お墓が表しているのは、じつはこの「もののあはれ」さではないか、と石の生い立ちを遡って思ったしだいです。

 

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