コロナウィルス報道で、とつぜん目につくようになったのが、横文字、カタカナ語の羅列です。
「クラスター」に「オーバーシュート」「ロックダウン」「ソーシャルディスタンス」などが緊急会見でも使われ、「わかりやすく日本語で言え!」と国民から総ツッコミがわいたのか、プレジデントオンラインからはこんな記事が出ています。
横文字連発で日本大混乱…コロナと同時に拡大した「新カタカナ語」辞典
この一大事において、まだ浸透していない新カタカナ語を使うなんて、「欧米か!」とツッコミたくもなるというもの。
おそらく、今の状況はグローバル危機でもあるので、日本人のカタカナコンプレックスが無意識に露呈したのかもしれません。
とはいえ、コロナ禍以前からも、新しい横文字が頻発してきているのは間違いないと思うのです。
わが業界も例外ではなく、たくさんの横文字、新カタカナ語が登場しています。
そこで思ったのは、もしかしたらコロナウィルス報道とおなじで、自分たちが思っているほど、新カタカナ語が一般の消費者には伝わっていないのではないか……という危機感です。
ということで、わりと古いはずであるこの業界にもはびこりはじめた横文字を、しっかりと日本語に直して説明していきたいと思います。
墓マイラー
歴史上の人物や著名人の墓におもむきお参りする人のことですが、日本語の「墓参り」に、英語の「~する人」の意味をあらわす「-er」をつけて、「墓参りをする人」になった新カタカナ語というか、日本語と英語が組み合わさった造語のような言葉です。
この墓マイラーに相当する言葉がそれ以前に日本語に存在しなかったのか、という疑問がわくかもしれません。
いやいや、ちゃんとあるんですよ!
掃苔家(そうたいか)という立派な言葉が。
掃苔というのは、漢字からもわかるとおり、苔を掃除すること。ようするに墓についた苔を取り去ることで、それが転じて「墓参り」を意味する言葉です。ですから、「墓参りをする人」は日本語の「家」をくっつけて「掃苔家」と呼ぶわけです。
日本語のおもむきの深さが表れた言葉ですよね。
墓についた苔を見つめるという時間的奥深さが加わっていることで、墓マイラーよりも、なんというかミーハーな感じが拭いとられて、深遠な感じがただよっていませんか。
デザイン墓石
「デザイン」という言葉がすでに日本語化しているので、あえて取り上げる必要がないのかもしれませんが、これもおそらく平成にはいってから出てきた言葉だと思うんですよね。
では、それまでは何て言っていたのでしょうか。
「墓石の形」だったと思うんですよ、たぶん。
それまでは、「こんな形どうですか」とか「あんな形にして」と言っていたのが、「このデザインいかがでしょうか」や「あのデザインがオススメです」などと言い出したのが平成になってからでしょうか。
そもそも「デザイン」という言葉の意味があまりにも奥深くて、おそらく日本語ではひと言で表せなかったのではないかと思います。
これは墓石業界だけに限らず、あらゆる分野でも同様で、「デザイン」という未来進行形の言葉が日本語には存在せず、表層的な意味合いで「形(カタチ)」ととらえることしかできず、それもあってか、「デザインにこだわること=ちょっと奇抜なカタチの墓石」という意味合いが強い時期もありました。
現在は本来の意味の「デザイン」が浸透してきたこともあり、カタチという表層的なものにこだわるよりも、「どう在りたいか」をデザインしていくという本来の言葉の意味に落ち着いてきている気がします。
墓石クリーニング
クリーニングも横文字ですよね。うちもかなり頻発に使うのですが、意外と「クリーニングって何するの?」と言われることがあるんですよ。「墓そうじじゃないの?」と。
意味合いとして近いのは「おうちでの洗濯」か「ドライクリーニングに出すか」の違いだと思っていただきたいのです。
うちで手洗いして落ちる汚れなのか、ドライクリーニングに出して、新品に近い状態を取り戻すのか、という付加価値を意味するのが「クリーニング」の言葉の意味になっています。
リフォーム、リノベーション
はい、これもよく使っています。そっか、これももとは英語なんですよね……。
リフォーム、リノベーションはお家の工事でも使われますが、日本語でいうところの修繕です。修理もここにふくまれるかもしれません。
古くなったところを修繕、修理して、あたらしく生まれ変わらせる、という意味合いになっています。日本語よりも幅広い意味合いになってしまうため、これもわかりにくい部分があるかもしれませんね。
修繕って言ったほうがわかりやすいのかもしれません。
メモリアルアドバイザーって何だよ??
最後に、わたしの肩書でもある「メモリアルアドバイザー」を説明したいと思います。
もしかすると、ロックダウンよりもオーバーシュートよりも分かりにくい言葉と言えるかもしれません。
日本語に直すと「葬送の助言者」でしょうか。なんか新ゲームのキャラクター名のようでもあります。
自分的には「なんでも屋」の響きをすこしカッコよくしているつもりですが、ほんとに何でも聞いてください、ということで、うまいこと説明できないことをお許しください……。
まとめ
こうして書き連ねてきて気づいたのですが、横文字やカタカタ語というのは、とても便利な言葉だということがわかりました。
日本語に直訳すると限定的な意味合いになってしまいますが、横文字を使うことによって、その言葉が意味する範囲がひろがり、それはサービスがひろがることでもあるのだろうと。
たとえば、「リフォーム」といわれるプランのなかには、「文字のペンキ入れ」といった細かな項目が入ることもあります。「文字のペンキ入れ」自体にはそれ以外の要素はいっさいふくまれませんが、「リフォーム」には、ペンキ入れなど幅広いサービスが含まれることになります。
こういう具合に、横文字にすることで広範囲の意味になり、わたしたち業者にとってもサービスを受けるお客さまにとっても、サービスの付加価値の授受がしやすいメリットがあることがわかります。
コロナウィルスで登場した新カタカナ語には、そういった幅広い意味合いがあるのかはわかりませんが、もしかすると日本語にするよりも、すこしやわらかい印象を与えるということがあるのかもしれません。
特定のことを強調するのを避けたい、という思惑が無意識にはたらいているともいえるかもしれません。
どちらにしても、わかりにくくなってしまっては元も子もないので、そこは意識して気をつけないといけないところですね。