「墓じまい」というバズワードからわかるセグメント無視の雑なまとめ方

11月からスタートしたメルマガ「ニュースレター まもりびと」を、ギリギリ月末最終日に送信させていただきました。

今回は2つのトピックスをとりあげたのですが、そのひとつ「墓じまいというバズワード」を、ブログでも公開しようと思います。

以下、メルマガからの転載です。


 

「墓じまい」をメディアが取り上げるようになってから、我々の業界ではいつしか「墓じまい」が「仮想敵」になっているように感じられます。

仮想敵になってしまうのは、「墓じまいは増えている」といった取り上げ方をされることで、これからお墓を建てる人やお墓のまもりびとが、お墓を維持していくことに不安を感じるのではないかという危惧があるからです。

メディアが取り上げる以前から、墓じまいは「改葬」として存在していました。改葬は現代の問題であるかのように捉えられがちですが、はるか昔から行われてきています。

時勢の変化にともなって、もともと存在している「改葬」が、墓をしまうことをクローズアップした「墓じまい」という言葉として生まれ変わりました。それがメディアをにぎわすようになったことで、お墓のネガティブな側面だけが伝わることへの不安が増したといえます。

その対応策として、業界側も必死に情報発信をするようになりましたが、今回はその視点について考えていきたいと思います。

「墓じまいが増えている」と報じられることで、お墓をまもっていくことに不安を覚えている潜在層が動き、ニュースを後押しするカタチになっている面もあるでしょう。

墓じまいそのものは、まもりびとの高齢化や地方の過疎化のせいで、需要があることは否めません。そのため、メディアの情報に対抗するには、「墓じまいに慎重になろう」という現場からの情報になります。

しかし、発信する側が墓じまいをする層をしっかりと分類、判別していないため、おしなべて「墓じまいを斬る!」発信になっているのが残念で仕方ありません。

メディアが墓じまいを取り上げる姿勢と同じで、墓じまいを一律に語ってしまっているのです。

メディアの情報が偏るのは仕方がない部分があると思いますが、現場を知っている業界の発信が偏っていることに気がついていないのは問題だと思っています。

墓じまいをする層のセグメント分け


墓じまいをする層は、大まかに4つに分けられると考えています。

  1. (地方にある)古いお墓を新たなお墓に移動する子どもがいるグループ
  2. (地方にある)古いお墓を片づけて、次の世代のお墓はまだ持っていない、子どもがいないグループ
  3. おひとりさまに近い状態の承継者が、元気なうちに終活の一環としてお墓を片づけるグループ
  4. 実家の墓の承継者がいなくなったので片づけるグループ

このうち、墓じまいについて慎重になったほうが良いグループは 3. になると思います。

承継者自身、またその家族が墓をしまいたいと考えても、その親類縁者が反対する可能性があるからです。関係者に相談をせずに墓をしまったことで、後悔したり、その関係性がぎくしゃくするといったことが起こり得るからです。

しかし、他の1.2.4のグループのほうが割合としては多く、1.と4.のグループに関しては、別の新たなお墓を持っている場合も少なくありません。

2.のグループは子どもがいない、いても遠くに住んでいるため、お墓は墓石ではなく、樹木葬や合葬墓、期限つき墓地などを購入する可能性があり、彼らの「次の世代に迷惑をかけたくない」という声をメディアが拾っていることが多いです。

「次の世代が迷惑に感じるかどうかを現役世代が忖度する必要はない」という発信もあります。私も同じようなことをブログかSNSで言及したことがあります。次の世代にゆだねることも大事だというふうに。ですが、そういった発信もターゲットが明確にされていないため、せっかくの情報がその層に届いていない可能性が大いにあります。

メディアが墓じまいを雑に取り上げることに憤りながら、発信する側が墓じまいをする人の状況や背景を語らずに、論じてしまっているのです。

ましてや、現場でお客さまと関わり、そうした背景や状況を踏まえているはずの業界側が、メディアと同じ手法で情報発信をする意味があるのでしょうか。

墓じまいをする層には、次の新しいお墓との付き合いが待っていることも少なくないのです。その彼らの行動を暗に否定して、まとめて取り上げることは業界にとって首をしめることになるはずです。

せっかくの情報がどう伝わっていくかまでを考えないと、墓じまいというバズワードにただ単に乗っかるだけでは、逆に足を引っ張ることになりかねないと思うのです。


 

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