最近、Spotifyでプレイリストをつくるという、この時期だからできる楽しみを一つおぼえました!
「お墓まいりに行こう」というベタなタイトルのプレイリストをつくったので、ぜひ聴いてみてください。
「わが心のベスト3」として、選曲のポイントをすこし説明したいと思います。
花束を君に 宇多田ヒカル
無期限休養期間中に妻となり母となった宇多田ヒカルさんの復帰作であり、NHKの「とと姉ちゃん」の主題歌としても知られているこの曲。
母親となった宇多田さんですが、その喜びの影で、実の母親である藤圭子さんを亡くしています。
この歌じたいが彼女の「母親賛歌」であるともいわれており、「愛しい人」という歌詞には、親子間の葛藤がありながらも、それでも消えない母親への想いがあふれだしているようです。
わたしはこの曲が流れると、亡き父のことを思い出します。
それはもしかしたら、親子としてどこか分かり合えてなかったような、消えないわだかまりがボヤっと浮かび上がってくるように感じるからかもしれません。でも時間が経つと、わかり合えなかったことそのものが消えない絆として残っているような気もしてきます。そして、親子ってそういうものかもしれないなと。
ひこうき雲 荒井由実
宮崎駿監督のアニメーション映画『風立ちぬ』の主題歌になったことで、ふたたび脚光を浴びたユーミンのデビューアルバムの表題曲です。
この曲をユーミンが作ったのは40年以上前。当時の彼女はまだ高校生で、「荒井由美」の時代に作詞・作曲を手掛けたオリジナル曲となっています。
曲そのものは悲しいメロディではないのですが、歌詞を追っていくと、その背景には「死」が横たわっている印象をうけます。それもそのはず、ユーミンの青春時代に起こった身近な若い人の死に衝撃を受けて作られたといわれています。
宮崎駿さんがこの曲を主題歌に選んだ理由として、
「鈴木プロデューサーと話していたら、突然『ひこうき雲』がかかって。懐かしいなと思って聴いていたら、絵コンテで追い込まれていたせいか、すごく心に響いて、誰にも見せないように涙した。力のある歌です。空想で作った歌じゃない、胸にしみるものがあって生まれた歌だと思った」と話しています。
ユーミン以降のオシャレな恋愛ソングとは毛色が違い、若いときに死を題材にして曲をつくっていることにも驚きます。静かな歌なのですが、まさに彼女の才能が爆発している歌でもあります。
のうぜんかつら 安藤裕子
この歌を、そして安藤裕子というアーティストを知ったのは「月桂冠」のCMソングに、この「のうぜんかつら」が起用されたからという人も多いのではないでしょうか。わたしもその一人です。
いま二人が一緒にいることの喜びを、トリミングしたかのような切なさを持つこの曲。
月桂冠のCMが、夫婦の「日常の延長線上にある特別さ」を描いていることもあり、この曲を耳にしはじめた当時、まだ新婚時代のわたしは、その幸せのはかなさを感じて胸がしめつけられる感覚をいだきました。
それもそのはず。この曲は、安藤裕子さんの祖父が亡くなったときに祖母が書いたとされるポエムをもとに作られていたのです。
「夫婦の日常のしあわせ」を、ずっとずっと先にある「別れ」から俯瞰的に見つめているために、切なさが湧きあがってきてホロリとくるのでしょう。
橙色のノウゼンカヅラが目に入る季節にはまだ早いですが、そのころには新型コロナウィルスがおさまってあの平穏な日々が戻ってきていたら。
この曲を聞くと、そんな願いがわいてきました。