地元の石材店でお墓を建てたという方から墓石クリーニングを依頼されたのですが、それにともない、お墓のある状態を直せないかと相談されました。
それは「お墓から水が出てくる」というもの。
「お墓に水が入る」相談はよくいただきますが、「お墓から水が出てくる」とは、おそらくはじめてのご相談。
建ててもらった石材店にも相談されたそうですが、結局直してもらえず、放り出された状態だということです。
お墓を一度、解体して原因を確定して建て直すことがベストなのですが、予算を多くとれないので、予算の範囲内でなんとかできないかというご相談でした。
限られた条件のなかでやらなければならないので、完全に直せるかは何とも言えないものの、やれるだけのことはやらせていただくということでお墓を見せていただきました。
すると、たしかに墓石の下の方から水が出ているのが確認できました。
土台コンクリートが湿っており、土台と墓石との間の目地から水が染み出ていることがわかりました。写真でもわかるとおり、土台コンクリートのエフロレッセンス(白華現象)も、内部の水が原因であると思われます。
内部の状態
解体せずに内部の状態を確認するために、灯篭を外してみることにしました。
たしかに、墓の内部に水が溜まっている状態が確認できます。
この原因として考えられるのは、
- 目地のセメントから、雨が侵入した。そのセメントの割合に砂が多い可能性
- 排水せずに、水があった状態のまま建てたので、水が抜けない
- この二つが重なった
です。
富山弁でひと言で言えば、「やんちゃくさい仕事」をされたということになるでしょう。
それに対して、誠意をもって対応してもらえるのであれば良かったのですが、どうにもしてもらえずにお客さまが困って他社に依頼しなければならなくなったのは、お気の毒でした。
できることは、いま内部に残っている水を抜いて、そのうえで目地をコーキングし、水が出てこないようにすることです。
そのために、排水管をつけることにしました。
中の水が外に出てくるために排水管を、左右両サイドに2つ、後ろに2つの計4つを備え付けます。土台コンクリートも水が出てくるせいで、黒ずみとエフロレッセンスに覆われていたので斫り、上塗りをします。
日陰になりやすい後ろ側の土台コンクリートには黒ずみが発生しています。後ろ側には2ヶ所、排水管をつけました。
排水管をつくったことで、排水口からは絶え間なく水が排出するようになりました。目地からの水の侵入は目地コーキングで防げるので、内部の水が出てしまえば、理論上は墓の中から水が出てこなくなるはずです。
お客さまには、しばらくは水が出てくることをお伝えし、様子を見ていただくことになりましたが、非常に喜んでくださいました。
「昔からある地元の石材店だから安心」というのは、そろそろ神話になるのかもしれません。今回は他社施工のものでしたが、決して私たちならあり得ないとは言えない可能性もあります。
お墓を建てる本数が多かった時代、まだ施工技術の途上にあった時代の仕事においては、今から見ると、「やんちゃくさい仕事」が行われた可能性がないとは言えないかもしれません。
そういったことを説明して、ご理解いただきながら、対応させてもらうことが必要なのでしょう。
こういったひとつひとつの仕事からの学びを、今後も生かしていきたいと思います。