囲うことの意義。お墓の外柵のはなし。

お墓の周りを囲む「外柵」というと、家でいうところの塀のような役割でしょうか。

外柵をつけることは、墓所の周りを囲んで隣の敷地との境界をハッキリさせるため、またあの世とこの世の境界をあらわすとらえるふしもあります。

しかし、お墓には必ず外柵をしないといけない決まりがあるわけではなく、墓地によっては外柵を設けることを禁止しているところもあります。(行政の墓地は比較的、外柵を禁止している場合が多い)

昔ながらの大きなお墓は、本当に塀のような立派な外柵がつけられているものもありますが、最近の傾向としては、外柵をつけるお墓も少なくなり、つけてもさりげないものになっています。

こういった低めの外柵をつけるお墓も増えてきました。
自分の家のお墓の敷地、空間は守りたいけど、そこまで大きなものはつけたくないという場合におススメです。

宗教建築での「囲む構造」

外柵は「囲む」ための役割をになっていますが、ここでお墓ではなく、建築で「囲む」とはどういう意義があるのかを見てみましょう。

建築で「囲む構造」と言えば、宗教建築が思いだされます。日本では、お寺や神社になりますね。寺院などは、その空間そのものが囲まれた構造となっています。

古代人は、巨木や巨岩に神霊が宿る神性を感じ、それらを信仰の対象とし祭るようになります。

いつしかその祭りの対象が、一本の樹や岩から、しめ縄や垣で囲まれた神聖な場所へと、点から面へと信仰の対象が変わり、囲むという「垣」の概念が生まれました。

その「物」を拝むことから、「物」がある神聖な場所を拝するというふうに変化していきます。

そして時代がくだり、その「囲む構造」がより顕著な中国大陸の建築物の影響を受けます。ちょうどその頃は仏教の伝来と重なり、仏教が持つ中央集権的な統治制度は、「囲む構造」の一つの特徴でもある【中心に求心力を求める構造】とシンクロします。

この時代の寺は、回廊が完全に閉じられた形で回廊が塔と金堂を囲む「ロの字型」になっていて、中心をしっかり囲む構造になっています。

さらに時代がくだり浄土教が広まると、浄土系の寺院の回廊は「迎える構造」になります。これは仏を迎え、浄土へ往生するという思想が、「コの字型」の構造に現れているようです。
<「日本の回廊、西洋の回廊 ~美と祈りの空間~」を参照>

楽園の語源にみる「囲う」意味

では西洋では「囲い」について、どのような考え方がなされていたのでしょうか。

ユダヤ教,キリスト教,イスラムの伝統における他界観念では、「囲い」は「園」として重要な意味をもちます。

楽園を意味する「パラダイス paradise」の語源は、ペルシア語「パイリダエーザ pairidaēza」ですが、これは古代ペルシアの宮苑のことで、「囲われた場所」「周囲をかこわれた」を意味しています。

“古代バビロニアでは,世界は天上界と地上界と冥界からなる3層の建造物と考えられ、人間の住む地上界のはるか上方には、地上をアーチ状に覆う聖なる天蓋があると信じられていた。”

コトバンク「paradise」より引用

東洋と西洋では「囲い」のイメージは少し異なるものの、わざわざその空間を囲うことはどちらも重要な意味があることがわかります。

昔のお墓と今のお墓の違い

大きな外柵によって囲まれていた構造から、「低い外柵」「納骨堂のデザインに組み込まれる舞台型外柵」、そして外柵なし、というのが最近の傾向です。

もちろん外柵をつけると高くなる経済的な理由はあるにしても、少しずつ外観が変わってきて、人の好みが移り変わってきているのには、また別の視点があるのではないかと気づきました。

日本の従来型のお墓の構造は、まさに「家」をあらわし、親族の求心力を強める装置としても役立っていました。それをあらわすかのような立派な外柵が設けられましたが、社会の変化、家族の変化にともなって、中心的役割が減少してきています。

そして、その後に増えてきたデザイン性の高いお墓は、家族が集う「楽園」「パレス」的なイメージがその外柵のデザインにも現れています。


逆に誰でも迎え入れるような、土台も低いフラットな構造のお墓も増えてきているのは、現代的な象徴であるのかもしれませんね。

こうして考えていくと、お墓の構造もその時代性をあらわしていて、外柵ひとつを見ても、わたしたちの考え方、生き方が現れているような気がします。

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